何かに導かれたかのように、川崎フロンターレのDF佐々木旭は居残り練習に加わっていった。ホームのUvanceとどろきスタジアムに浦和レッズを迎える3日の一戦へ向けて、グラウンドではFW陣が試合前日恒例のシュート練習に励んでいた。
「そこで自分も2本くらい打たせてもらって、けっこういいシュートを打てたので。そのイメージがあったので、今日も思い切って打ってみようと思って」
利き足の右足に残る好感触が蘇ってきたのは、1-1で迎えた49分だった。
自軍のゴール前から佐々木がクリアに近い形で前方へ蹴り出すと、ボールは今シーズン初先発のFWバフェティンビ・ゴミスの元へ渡った。浦和のゲームキャプテン、DFアレクサンダー・ショルツを背負った壮絶なデュエルが始まる。
身長186cm・体重90kgの巨躯を誇るゴミスなら、必ず味方にボールを落としてくれる。そう思ってポジションを上げた佐々木は、ちょっとした異変に気がついた。
「バフェ(ゴミス)が収めたときに、周りにサポートがいなかった。自分の前が空いていたので、それで前へ出ていったら(橘田)健人くんからいいボールが来て」
デュエルを制したゴミスからボールを託されたMF橘田健人が、ゴミスとの距離を詰めていた佐々木へワンタッチパスを通す。ちょうどハーフウェイラインあたり。その7秒後に勝ち越しゴールが生まれるとは、このときは誰も思わなかった。