■実際にトレーニングを試みて
そして2年目を迎えた今季はベンチ入りコーチに昇格。基本的に全試合に帯同し、試合中に指揮官から「これ、どう思う」と意見を求められる機会も増えた。そういうタイミングでのS級受講ということで、本人もより意欲的に学びの場にのぞめたはずだ。
2024年のS級講習会は4、6、8~9、10、11月の5つのモジュールに分かれており、受講生は毎回3週間程度、集中的に講義を受け、指導実践を実施。それに加えて国内・海外クラブでの実地研修を経て、ようやくライセンスを取得できるという長い道のりだ。
「モジュール1」は4月7~28日。初日には早速、浦和レッズ対サガン鳥栖戦の観戦に出向いた。
「この試合を見て、受講生にはシステム含めて分析する目を養い、指導実践で自分のプレーモデルを表現してほしい。システム論だけじゃなく、個々やチームの役割も明確になるような練習を考えてもらいたい」と奥野僚右チューターは説明。この試合観戦が指導実践を進めるうえで重要な教材になるのだ。
中村俊輔が監督役を務めたのは18日。与えられたのは「4-3-3の浦和レッズに対する高い位置からの守備の改善」というトピックで、拓殖大学2年生に対して実際にトレーニングを試みる形だった。
「監督の中村です。2日後に浦和戦があるという想定でやります。トレーニングするうえでベースとなるのは、ハードワーク、向上心、コミュニケーション(声)の3つ。そこは当たり前にしていきましょう」と話す彼は、ボードに書いた内容を見せながら、全員の前で強調。コーチ役の大和田真史(千葉コーチ)、GKコーチ役の西川陽介(甲府フットボール部部長兼アカデミーダイレレクター)、フィジカルコーチ役の石田美穂子(ニッパツ横浜FCシーガルズ監督)らと協力しあいながら、ハーフコートでの11対11からスタートした。
「1個1個大事に」「狙いは前へ」「ボールを取ったら相手が閉じる前に攻めよう」「情報入れよう、相手はどこにいる?」と彼は短い声かけで選手たちを鼓舞。密にコミュニケーションを取りながら練習を進めていった。