■「逆に楽しみです」
今大会の日本代表を左足でけん引する山田楓喜は、開催国のサポーターが駆け付けてアウェイの空気を作り出すことに、むしろ「なんかわくわくするっていうか、逆に燃える」と話す。そして、判定すら“ホームチーム”に傾きかけない空気感を「逆に楽しみです。そういうのに勝っていかないと、やっぱオリンピックの切符は取れないと思うので」とすら話す。
その山田楓と右サイドでコンビを組むことが予想される関根大輝も、同じ考えだ。スタジアムが完全アウェイの空気に包まれることを予想したうえで、「僕自身はそっちの方がすごいやりやすいっていうか、やりがいがあるます。判定とかいろいろストレスが溜まるところはあると思いますけど、そういうところを結果で黙らせたい」と言うのだ。
この試合は90分で決着がつかなければ延長に進み、それでも勝敗が決まらなければPK戦に突入する。どんな形であっても、白黒を分ける一戦である。一方で、このチームはそうした延長やPKにもつれこんでの試合展開を経験したことがない。その面に関しては、個人の蓄積に頼る部分が大きくなる。
しかし、それぞれの経験を共有しつつメンタル面でも支え合おうとしている姿が、選手に取材していて伝わってくる。
「チームとして結束力が高まった」
佐藤恵允が手応えをこう口にするチームが、パリ五輪の出場権だけでなく、日本代表としての新たな希望もつかみ取る。
(取材・文/中地拓也)