「ハッピバースデー トゥーユー ハッピバースデー トゥーユー」
麻生グラウンドの一角で、明るい歌声が響き渡った。声の主は、勝利後の“万歳三唱”でお馴染みの小森すみ恵氏。集まった報道陣に隠れた小森氏が、青い誕生日ケーキを手にして表れる。ファンサービスを終えた直後の鬼木達監督も思わず笑顔に。そして多くの祝福を受けながら、ホールケーキを受け取ったのである――。
4月20日、川崎フロンターレはJ1リーグ・第9節で東京ヴェルディと対戦する。連敗ストップをかけたこの試合は、チームを率いる鬼木達監督の50歳の誕生日でもある。
指揮官が50代で迎える最初の試合を前に、16日、川崎フロンターレの番記者が麻生グラウンドに集まった。そして練習後、サプライズでバースデーケーキを渡すことになった。
鬼木監督も、練習開始時点でこの日の報道陣の集まり方がいつもより多かったことに気が付いていた。そのため、クラブスタッフに「今日は人が多くない?」と“スカウティング”とも言える質問を投げかけていたという。真っ青な晴天の下、番記者勢の“サプライズ”を知っていたスタッフの答えは、「天気が良いからですかね?」というもの。
奇抜なアイデアを武器にしているフロンターレのスタッフとは思えぬ“切り返し方”と思われたが、鬼木監督は「そうだよねぇ」と疑う素振りもなく信じて練習に入っている。後にそれがフェイクだったことを知った指揮官も、「あ、もう知ってたのか(笑)! そりゃあ、知ってるよね。それなのに俺はあっさりと……(笑)」と顔を赤らめた。スタッフが後に、「事前に話すと、性格的に“俺はいいよ”って辞退するから」と明かしているからこそのサプライズ。フロンターレブルーに染まった天候が、報道陣とスタッフに味方したのである。