大住良之の「この世界のコーナーエリアから」第134回 オランダVS日本「ボール救出」合戦(2)日本サッカーの未来を担う若者たちの「知恵と勇気」の画像
写真集『オランダの畑』の裏表紙。水路に落ちたボールをユニフォーム姿の男性が見事に救出している。(c)Y.Osumi

 サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト大住良之による、重箱の隅をつつくような「超マニアックコラム」。今回は、「オランダ・サッカーの知られざる文化」と、「日本における奇跡の遭遇」について。

■「オランダ・サッカー文化」の一部に

 下流でもかなりの流れがある多摩川では、こんな器具があっても、とうてい間に合わなかっただろう。川に落ちたボールは、「どんぶらこ、どんぶらこ」と、まるで桃太郎の桃のように流れ、数時間もかからずに東京湾まで出てしまうに違いない。新品のボールをわずか数十分間使っただけで失ってしまった悔しさとともに、海まで流れてしまったボールが分解もされず、海洋汚染の一翼を担ってしまうのではないかということも、私は憂うのである。

 おそらく大型スポーツ店、あるいはホームセンターのようなところに行けば、売っているのではないだろうか。あるいは、村の鉄工所に頼んでつくってもらうのか。ともかく、オランダには、ステキな「水落ちボール救出器具」がある。「ボールが水に落ち、それを拾って試合を続けること」は、他には例のない「オランダ・サッカーの文化」の一部になっているのではないかとまで、私は思うのである。

 ところが、私は日本で、それも東京で、実にドラマチックな「川からのボール救出劇」を目撃したのである。

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