現在、世界中のトレンドとなっているマルチ・クラブ・オーナーシップ(MCO)。同じオーナーが異なる地域やリーグに所属するクラブを複数所有し、経営することで、さまざまなプラスαの効果を上げるビジネスモデルだが、それをアジア発という新しい取り組みでけん引するのが『ACAフットボール・パートナーズ』だ。
そのCEOを務める小野寛幸氏に直撃インタビューを敢行した。#5では、Jリーグの強みから改善点、さらに日本代表がさらに飛躍するための意見を聞いた。
Jリーグは「アジアのプレミアリーグ」に
――2023年4月の『フォーブス』の記事で、小野さんは「あらためて日本のJリーグの経営ガイドラインのクオリティに驚いた」と語っておられます。その意味は?
まず、今年30周年を迎えて、横浜フリューゲルスが消滅した以外、破産や倒産したクラブがないことは素晴らしいことだと思います。ヨーロッパでは大なり小なり破産したクラブや、 倒産してなくなったクラブがあります。クラブのアイデンティティを失ったヨーロッパの街が多く存在する一方で、30年間、一切の取りこぼしがなく続けられている、そして、各クラブが切磋琢磨しているというJリーグは素晴らしいと思います。
観客動員数などのデータを見ても、平均動員数では、ヨーロッパと競争できる水準にある。加えて、スポンサー料なども含め、売り上げという面では、近々に100億円に到達するクラブもあるでしょうし、現時点でも、20~50億クラスのクラブがゴロゴロいますしね。経済圏でも、プレミアリーグなどの5大リーグに次いだ、ロシア、トルコなどの第2グループにいますし、世界的に見ても、経済面では数字が立っているリーグだと思っています。
そこをより発展させるために、何が必要かを考えたときに、「アジアのプレミアリーグ化」という言葉を使ったこともありました。簡単に言えば、もっとブランディングをできるはず、というメッセージですね。
そこで、この問題の着地点として、私が提案したいのが、ACAFPというプラットフォームを活用してみませんかということ。日本のワールドカップ優勝という目的を達成するためには、ACAFPが日本のクラブを買収するよりも、すでにヨーロッパのクラブとの関係を構築できている私らを利用するほうが、話が早いと思うんです。それは出資でもいいし、パートナーシップでもいい。そうやって、私らが、Jリーグと世界をリンクさせる役割を担わせてもらえれば、日本のワールドカップ優勝の一助になるのではと思っています。
――日本サッカーが、ワールドカップ優勝という目的を果たすためには?
私は、ワールドカップは「ヨーロッパ仕様のサッカー大会」だと思っています。なぜなら、世界のトップ選手の多くがプレミアリーグのチームに所属していて、ワールドカップは、そんな彼らを国別にリシャッフルしているという現状なんだと思います。
そこで思い浮かぶのが、2022年のワールドカップの予選Eリーグで、日本代表がスペイン代表に勝ったときのインタビュー。DF冨安健洋選手が「プレミアでやってるんで。日常が出せたかなと」と答えているんですが、まさに、その通りだなって。同じく、DF酒井宏樹選手だって、当時はフランスリーグでネイマール選手と日常的に戦っていたわけです。つまり、世界のトップリーグで戦っている日本人選手がどんどん出てくれば、それだけ、強豪国の代表に勝てるチャンスが高くなるんですね。