森保監督に「北米ファンを作ってください」

 そこで、ワールドカップ優勝のために日本ができることを考えると、Jリーグは、もっと海外のビッグクラブとのコネクションを持つべきではないか。コネクションを持つ相手は、プレミアリーグのトップ6や、スペインの4強じゃなくてもいいんですよ。むしろ、そういったトップクラスと対戦する機会があるクラブに送り込めるようなコネクションを持てばよいのではと思っています。

 ――以前、小野さんは、森保一監督と意見交換をされたそうですが、そこではどんなお話を?
 私は、森保監督のジャパンイズム、サッカー戦術をもっと海外に広めてもらいたい。次の北米ワールドカップで日本が結果を出すためには、開催地など、現地ファンをもっと作ってくださいとお願いしました。

三笘薫や久保建英らスターを育てた森保監督。撮影/原壮史(Sony α‐1)

 なぜ、私がそう思ったのかというと、カタールワールドカップの予選Cリーグの、ポーランド対アルゼンチン戦。あの試合で、アルゼンチンはグループステージ敗退が決まるかもしれないという状況で、絶対に負けられない戦いでした。そこで何が起きたか? 私はその試合に居合わせたんですが、4万人のスタジアムの客席の多くが中東の方々だったにもかかわらず、 そのほぼ全員がアルゼンチンのユニフォームを着て、メッシのチャントを歌って、どう考えてもアルゼンチンがホームという雰囲気になっていたんです。 ポーランドには何もさせず、結果、アルゼンチンが2-0で勝ちました。つまり、メッシという世界的スターを応援する現地の人々によって、アルゼンチンは有利な環境を作ったんですね。
 そして、日本にも、久保選手や三笘選手をはじめとする、グローバルスターが出始めていて、彼らは 日本人じゃない日本代表ファンを作れる可能性がある。そして、そういった存在を作り上げたコーチとして、森保監督が脚光を浴びているのだから、もっと、その考えを北米で話してほしい。その考えを啓蒙していくことで、3年かけて北米のファンを増やすことが、日本代表が次のステップへ行くための道なのではと、お話しはした覚えがあります。

――小野さんの最終ビジョンは?

 マルチクラブオーナーシップで、イギリス、スペイン、ベルギーの人材や、そこに紐付くスポンサーやビジネス起業家とのグループと関係を作る一方で、日本でも発信を続けたことで、私たちに興味を持ってくれる人が増えてきて。このコミュニティーの輪がどんどん広がってほしいです。
たとえば、ベルギーのあそこの人材がいいから、日本のスタートアップで雇用したいとか。極端に言うと、スタンフォードは起業、ハーバードは経営みたいに、ビジネスキャリアを考えたときに、サッカービジネスといえば、ACAFPと言われるようになれればうれしいですね。

小野寛幸(おの・ひろゆき)ACAフットボール・パートナーズ CEO。慶應義塾大学卒業後に、大和証券エスエムビーシー株式会社(現:大和証券株式会社)に入社し、M&Aや資本調達アドバイザリー業務に従事。米系投資銀行を経て2011年ACA株式会社入社。
現在はマルチ・クラブ・オーナーシップを核としたフットボールビジネスを新設、資金調達や事業構築を担当する。

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