チャールトンへの「資本参加」3つの目的

 槙野さんも、ここまで徹底したものはJリーグでもお目にかかれないと言ってくれましたし、Jリーグの関係者はもちろん、プロ野球のDeNAベイスターズの方々も見学に来てくれたりもしました。
実際に、こういった施設を魅力に感じて、KMSKデインズに来たいと言う選手も増えているんです。 

 昨シーズンのベルギー2部アシスト王の、MFギヨーム・デ・シュライバー選手も加入してくれましたし、また、ベルギー1部のセルクル・ブリュージュから、この選手を鍛えてくれとお願いされたり。今やアジアに限らず、ベルギーリーグでも、寺子屋のような存在になりつつあります。

――さらに、昨年7月にはイングランド3部リーグのチャールトン・アスレティックへの資本参加を発表していますよね。この目的は?

 3つ目的があって、まずは、イギリスでの社交界デビュー。 冗談に聞こえるかもしれませんが、実はこれが大事なんです。

熱狂的なサポーターを擁することで知られるチャールトンの本拠地「ザ・バレー」。

(C) Charlton Athletic FC

 2つ目は、やがて、KMSKデインズがベルギー1部に上がった世界戦で、チャンピオンシップにチャールトンが上がったときに、初めて、チャールトンが機能すると言いますか。

 デインズやチャールトンが各国のリーグで昇格すると、選手のステップアップを見込んだ移籍や、受け入れクラブから見て有望な選手を傘下クラブから引き抜くなど、MCOとしての機能美が活きてくると考えているんです。この点は、これからのお楽しみということですね。

 3つ目は、資本参加前から想定していたことですが、同じグループにチャールトンがある、そこへの道があるとわかると、監督も含めてフロントスタッフの目の色が変わったんですよ。

 今のチームで結果を残せば、イギリスで勝負ができる。すでに、頑張って結果を残すから、来年はチャールトンへ行かせてほしいと言ってきた野心家のスタッフもいます。それだけ、プレミアリーグの古豪チャールトンというブランドは大きくて、スタッフたちのモチベーションアップにもなっているんです。   
 プレミアリーグというサッカーの聖域への挑戦の場を提供する。そういった目的もあります。

――現状3チームを保持されていますが、いま注目しているリーグやクラブはありますか?

 いま興味があるのは、フランチャイズ型で、かつ昇降格がないリーグが良いかなと思っています。たとえば、アメリカやオーストラリア。やはり、降格がないからこそできる勝負というものがあるので。
 サウジアラビアは、私は一過性ではないかと。初速は成功しているけど、有名どころを根こそぎ持っていっちゃったので、彼らの選手としての寿命が終わったときに、はたして次がいるのか。ブランドの先買いをしちゃったなって印象です。ただ、彼らにも問題意識はあると思うので、近い将来、サウジの投資家や心ある方々と、私らの交差もあるのではないかと思っています。

小野寛幸(おの・ひろゆき)ACAフットボール・パートナーズ CEO。慶應義塾大学卒業後に、大和証券エスエムビーシー株式会社(現:大和証券株式会社)に入社し、M&Aや資本調達アドバイザリー業務に従事。米系投資銀行を経て2011年ACA株式会社入社。
 現在はマルチ・クラブ・オーナーシップを核としたフットボールビジネスを新設、資金調達や事業構築を担当する。

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