現在、世界中のトレンドとなっているマルチ・クラブ・オーナーシップ(MCO)。同じオーナーが異なる地域やリーグに所属するクラブを複数所有し、経営することで、さまざまなプラスαの効果を上げるビジネスモデルだが、それをアジア発という新しい取り組みでけん引するのが『ACAフットボール・パートナーズ』だ。
そのCEOを務める小野寛幸氏に直撃インタビューを敢行。#1では、サッカーの世界で進むビジネスの動き、そしてACAフットボール・パートナーズが目指す姿を語ってもらった。
はじまりは「UEFAチャンピオンズリーグ」決勝戦
――はじめに、小野さんが、フットボールビジネスを始めたきっかけはなんだったのでしょうか?
もともとサッカーに詳しいほうではなかったのですが、サッカー好きの株主のお付き合いで、2016年にイタリアのミラノで『UEFAチャンピオンズリーグ』の決勝戦を見る機会があったんです。ミラノは初めてで、ファッションの町というイメージだったのに、町の至るところで発煙筒が焚かれ、チームのブースが開かれていて、完全にサッカーの町になっていた。その熱狂っぷりに衝撃を受けました。そして、自分もこんな熱狂の場を作りたいと思うようになったんです。
本格的に動き出したのは、2020年。コロナ禍で少し時間ができたので、オランダのスポーツ経営を専門とする大学院でフットボール経営を学んだんです。そこで着目したのがイギリスのプレミアリーグの収益構造です。クラブ側がSNSに力を入れて、フォロワーの多さを武器に放映権を高く売っている。そうやって、サッカーを“エンターテインメントコンテンツ”として見せることができて、自国以外の人々にもきっちりと波及できれば、ビジネスとして成功できるのではないかと思い、本格的に始動しました。
――『ACAフットボール・パートナーズ』では、現在、世界のトレンドである、複数のクラブを所有し、経営していく“マルチ・クラブ・オーナーシップ(MCO)”を行っております。改めてMCOの説明をいただけますか。
まず、先にお話ししたプレミアリーグなど、潤沢なお金を回せるリーグやクラブが、どんな弊害を生んだか? そこを理解する必要があります。そのわかりやすい例が、今のサウジアラビアのやり方で、良い選手をお金で引っ張ってくると、それに対抗するためにライバルクラブが巨額のお金で似たような選手を取ってくる。そうすると、マネーゲームとは言いたくないんですが、ビジネスが非常に勃興しだすんですね。
サウジアラビアは近年の流れですが、有望な若手選手や、話題も含めて活躍できる選手の移籍金がどんどん上がり、結果、得ている収益のほぼすべてを選手獲得にまわさないといけなくなる、そんな流れは、すでに起こっていたんです。
その流れはプレミアリーグも例外ではなく、その状況に対して、シティ・フットボール・グループCEOのフェラン・ソリアーノさんなどの経営者側が、対抗策を考えたわけです。