■「この人についていけば成長できるなっていう人」

 佐々木がそこまで言うのも、曺監督へのリスペクトが大きいから。そこで思い出されたのが大学時代に上手くいかなかった試合の、次の日の練習のことだ。ともすれば落ち込んでしまうタイミングだったが、「一緒に走り行くぞ」と声を掛けられ、2人で走りながらサッカー以外のいろいろな話をしたのだという。その対話があったことで、佐々木は前を向くことができた。

 また、怒られた際に思わず感情的な態度を取ってしまったことがあった。「そのとき、マジでやっちゃったと思った」と振り返るが、それでも曺監督は佐々木の肩に優しく手を添えて、丁寧に言葉を重ねたのだという。それは1時間にも及んだ。

 佐々木は、「俺が言うのもあれですけどすごい信頼できる人ですし、この人についていけば成長できるなっていう人だった」と明かす。

 そんな大学時代と今では、試合に懸ける思いが違う。学生時代は勝敗を個人のものとして、あるいはチームのものとして受け止めていたが、今はサポーターやスポンサーなど、多くの人の応援があることを実感している。

「自分たちの勝敗だけじゃないというか、やっぱりいろんな人の思いがあってのこと」

 ここまで自身のプレーには満足していない。「課題だらけ」とも表現するが、だからこそ、恩師の前でのプレーを飛躍のきっかけとすることが望まれる。

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