「家長の欠場]「新ワントップ」「大迫の孤立」そして「ジェフ千葉の下剋上」【川崎フロンターレVSヴィッセル神戸戦が示した「2024年Jリーグ」の覇権】(3)の画像
川崎フロンターレはロングボールも駆使して今季初タイトルを手にした。撮影/原壮史(Sony α1使用)

 Jリーグ開幕まで1週間を切った。2月17日には、今季初の公式戦「FUJIFILM SUPER CUP」が行われた。川崎フロンターレヴィッセル神戸に勝利した一戦は、今季のリーグの趨勢を占うものでもあった。2024年のJリーグの行方を、サッカージャーナリスト後藤健生が読み解く。

■ハイプレスを攻略!川崎の「新オプション」

 さて、2つの異なったスタイルが激突するかと思われた「FUJIFILM SUPER CUP」は、予想されたような展開にはならなかった。

 2月17日のこの試合、ヴィッセル神戸は狙っていたはずのハイプレスがあまり機能しなかったのだ。一方、川崎フロンターレのほうもパスをつないでボールを動かすような“川崎らしい攻め”はあまり見られなかった。

 川崎はなぜパス・サッカーを機能させられなかったのか?

 原因はいくつか考えられる。

 新しくチームに加わった選手が多く、先発メンバーを変更したことで、パス回しの中心となっていたMFの脇坂泰斗やキープ力では日本最高クラスの元日本代表・家長昭博がいなかったことがある。

 また、この試合でワントップにはバフェティンビ・ゴミスが入っていた。ゴミスは、前線で1人でボールを収めることのできる強さを持つが、川崎のゆったりしたパス回しの中で動き出しのタイミングを合わせられない場面が多い(動き出しがワンテンポ早すぎる)。そのため、パスを回すよりも、ロングボールをゴミスに直接当ててしまうほうが攻撃につながりやすかったのだ。

 さらに、今シーズンは秋口から国立競技場の芝生の状態が悪く、1月にラグビーの試合にも使われたためにピッチ・コンディションが悪く、グラウンダーのパスをつなぎにくいのも川崎がパス・サッカーに固執しなかった理由だったろう。

 つまり、川崎はいくつかの原因でパスを回しにくくなったのだ。

 だが、同時に、「神戸のハイプレスをかわすために、ロングボールをうまく使った」と言うこともできる。

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