■頭抜けたリーダーの不在
3、頭抜けたリーダーの不在をどう考える?
今回のイラン戦を見て「長友佑都(FC東京)や吉田麻也(LAギャラクシー)がいたら違っていたのでは?」と感じた人も少なくなかったはず。流れの悪い時に立て直すためには、冨安健洋(アーセナル)が言うように、声を出して強引に周りを鼓舞する人間も必要だろう。
しかし、今のキャプテン・遠藤は背中で引っ張るタイプ。しかも自分自身も疲労困憊でいっぱいいっぱいだっただろうから、イランに押し込まれる中で修正を図るだけで忙殺されてしまった。
それ以外のメンバーを見ても、厳しいことをズバズバ言えるのは冨安と堂安律(フライブルク)くらいで、他のメンバーは自分のタスクを淡々とこなす傾向が強い。そういった現状もイランに飲み込まれた一因ではないか。
森保監督はそのあたりを質問されて、こう答えていた。
「特に私の環境作りが必要かなと思います、これまではベテラン選手がすごく声をかけてくれていたところはありますけど、その都度呼んだメンバーの中で、勝つために自分たちが声掛けできるところ、雰囲気作りができるところをやっていくのが大切だと思います」
つまり、指揮官自身が選手の声出しなどを促していくことが重要という認識だが、本当にそれだけでいいのか。今回のアジアカップ惨敗を機に、改善すべきことを抽出し、1つ1つ手を付けていかないと、このままズルズル行かないとも限らない。
1か月以上にわたる貴重な強化の場を失敗という形で終えたことを重く受け止めて、前に進まなければ、W杯優勝どころか、アジア予選の大苦戦もないとは言い切れないのだ。
(取材・文/元川悦子)