■競争力激化の証拠

 東南アジア勢の躍進で、アジアカップは24チームでも十分コンペティティブな戦いとなり、「ビッグネーム」でも気を抜くことができない試合が続いた。

 今大会を含めて18回の大会史上、一方のチームが5点以上取った試合は20ある。大会は、1956年の第1回大会はわずか4チームの参加で行われ、広島で開催された第10回大会までは決勝大会の出場チーム数も不安定だった。しかし1996年のUAE大で12チーム、さらに2007年の「東南アジア大会」では16チームに増やされて、大会の体裁が整い、2015年のオーストラリア大会で現行の24チームとなった。

「大量得点」を「5ゴール以上」とすると、20試合となり、過去の多くの大会でそうした試合が生まれている。前回、2019年のUAE大会では、イランがイエメンを5-0で下し、カタールは北朝鮮に6-0の大差をつけた。ちなみに1チームの最多得点は8ゴールで、1976年のイラン大会でイランが南イエメンに8-0、2000年のレバン大会で日本がウズベキスタンに8-1と、2チームが記録している。

 ところが、グループステージの36試合を終わっただけだが、今大会は5点以上を取ったチームは皆無だった。4点を取ったチームもわずか3つ。ベトナム戦の日本(4-2)、パレスチナ戦のイラン(4-1)、そしてマレーシア戦のヨルダン(4-0)である。24チームの力の差が小さくなっていることが、この事実だけでわかるのではないか。

 過去40年間ほど、アジアのサッカーはイランと東アジアとアラビア半島の国々がリードしてきた。それはアジアカップ優勝チーム、ワールドカップへの出場チームのリストを見れば明らかだ。イラン、韓国、サウジアラビアが「強国」として全時代をリードし、そこに1990年代から日本が、そして2006年からオーストラリアが加わった。

 だが、アジアのサッカーは変わりつつある。サッカーが熱狂的な人気をもち、国全体にサッカーの文化が浸透している東南アジアの国々の成長と強豪への食い込みは、アジアカップとワールドカップの出場枠拡大を契機に大きなトレンドになろうとしている。その流れを見落とすことは許されない。

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