女子サッカーの日本一を決める皇后杯は、残すところあと1試合となった。決勝までの道のりを振り返ると、日本の女子サッカーの発展の軌跡が見えてくる。変化の胎動を、サッカージャーナリストの後藤健生が読み解く。
■最下位からの逆襲
INAC神戸レオネッサの準決勝も延長戦にもつれ込んだ。相手は、ちふれASエルフェン埼玉である。
EL埼玉は、現在リーグ戦では10位。昨年度の皇后杯でも準決勝に進出して、同じI神戸に敗れてはいるが、WEリーグ発足から2シーズン連続で最下位というチームだった。
しかし、今シーズンから就任した池谷孝監督の下、このところ強豪相手に素晴らしい試合を続けており、準々決勝では日テレ・東京ヴェルディベレーザを延長戦の末に下していた。
ベレーザ戦のEL埼玉は序盤戦に何度か攻撃をしかけただけで、後は5バックで専守防衛。トップには本来はボランチである瀬野有希を起用し、前線からも守備を徹底して、「ゼロで抑える時間」を長くすることに専念した。
引いて守る相手に対してベレーザはサイドからのクロスに対して山本柚月が飛び込んだり、日本代表(なでしこジャパン)の主力でもある藤野あおばが鋭いドリブルで切れ込んだり、サイドバックが攻撃参加したりと多彩な攻撃を繰り広げたものの、EL埼玉の分厚い守備を破ることはできないまま時間が経過した。