■ジャイアントキリングの方程式
こうしてスコアレスのまま迎えた74分、EL埼玉は前線に祐村ひかるを投入。祐村と吉田莉胡のツートップに変更した。瀬野をMFに下げて中盤の守備を強化するとともに、FWを2枚並べてカウンターをしかけたのだ。吉田も祐村も足が速く、ダイナミックに動ける選手だ。
ベレーザが前がかりになった裏のスペースを使う意図だった。
そして、このギアチェンジが功を奏して1点を先行することに成功。延長前半95分に吉田のパスを受けた左ウィングバックの金平莉紗が祐村との間で大きなワンツーを使って抜け出して先制ゴールを決めたのだ。
実は、ベレーザとEL埼玉は2023年12月10日にもWEリーグ第5節で対戦しており、この試合でもEL埼玉はベレーザの攻撃をしのいでスコアレスドローに持ち込んでいた。そして、この試合でも終盤にトップの吉田の走力を生かして何度かベレーザ・ゴールを脅かす形は作っていた。ただ、せっかくのチャンスでパスを選択するなど、攻撃が中途半端で得点には至らなかったのだ。
試合後、池谷監督は「うちの選手たちはサッカーを知らない」とボヤいていたが、皇后杯ではリーグ戦での引き分けからの教訓を生かして、思い切って攻め切ったことで勝利に結びつけたのだ。
つまり、EL埼玉はジャイアントキリングの“方程式”のようなものを完成しつつあった。