■名門の厳しい対応
もっと厳しかったのが、イタリアのASローマの取材でした。
トリゴリアのトレーニング施設に取材に行くと、取材者は全員メディアルームに集められ、練習が行われている間は、練習を見ることができないように窓にブラインドが下ろされてしまいます。そして、ドアにはガードマンが立っていて、部屋から出ることはできないのです。
日本の有名スポーツ雑誌のインタビュアーと編集者もファビオ・カペッロ監督をインタビューするために来ていましたが、「取材料は現金で払え」と言われ、編集者が慌てて銀行まで往復するハメに陥っていました。
そういえば、こんなこともありました。鹿島アントラーズのトニーニョ・セレーゾ監督のインタビューを申し込んだ時のことです。広報から「事前に質問事項を書いてFAXで送れ」と言われたのです(「FAX」というところが時代を感じさせるでしょう?)。
「質問事項の事前チェックか。けっこう厳しいんだなぁ」と僕は思っていたのですが、インタビューを終わってから高井蘭童通訳に聞いたところ、トニーニョ・セレーゾ監督が「昔のことを尋ねられても記憶していないことも多いだろうから、事前に質問を見て昔のことを思い出したり、資料を見ておきたい」と言ったのだそうです。
つまり、質問事項を要求されたのは広報による「事前チェック」のためではなく、トニーニョ・セレーゾの誠実さによるものだったのです。