サッカー日本代表が、アジアカップで白星発進を果たした。ベトナム代表相手の4-2という勝利だったが、この一戦はアジアカップの活用法も示した。サッカージャーナリスト後藤健生が、アジアでの戦いぶりを紐解く。
■格好のトレーニング
「再現性のある攻撃パターンの確立」。それこそが、今、求められていることだ。
たとえば、サイドバックの攻撃参加……。
ベトナム戦の先制ゴールは伊東純也のCKから生まれたが、そのCKは左SBの伊藤洋輝のオーバーラップから生まれた。DFの谷口彰悟からの縦パスを中村敬斗がワンタッチでさばいたものだった。
あるいは、前半終了間際(中村のゴールが決まって3対2と逆転した直後)に右SBの菅原由勢がベトナムのペナルティーエリアの深い位置、いわゆる「ポケット」を取るプレーを見せた。
タッチライン際でボールを受けた伊東がドリブルで仕掛ける間に菅原が飛び込んでいったプレーだ(菅原のリターンを伊東がシュートしたものの、ベトナムのGKフィリップ・グエンが弾き、そのボールに南野拓実が詰めていたが、シュートははずれた)。
こうした「ポケット」を取るプレーは、1月1日のタイとの親善試合でも何度か試みていたプレーであり、今後も増やしていきたい。
幸い、ラウンド16までは格下との対戦ばかりだ。
必然的に、日本がボールを握って攻撃を仕掛ける時間が長くなる。そして、相手チームはベトナムがやったように、自陣に人数を割いて日本の攻撃を封じ込もうとしてくるはず。日本の選手たちはスペースがほとんど与えられない中でのプレーを強いられる……。
つまり、攻撃パターンのトレーニングには格好の条件なのである。
「個の力」による華麗なゴールを見せてもらうのも楽しみだが、パスをつないで相手を崩す数多くのパターンを見てみたい。
もちろん、相手との駆け引きという面も必要ではあるが、サイドバックの攻撃参加のパターンの形は意識的に増やすことができるはずだ。スペースがない中でそういう攻撃が機能するようになれば、将来強豪と対戦する時にも大きな武器となるはずだ。