■育成年代にかける期待
いや、青森山田を追うべき全国の強豪高校も、青森山田をリスペクトし過ぎることなく、テクニックやアグレッシブさで彼らを上回るようなチームを作って挑戦してほしかった。近江高校という、無名の高校がそうした戦いで青森山田に戦いを挑んだのだから……。
サッカーというのは、エンターテインメントなのだ。結果だけを考えて慎重な戦いを進めるよりも、アグレッシブな攻め合いをする方が観客にとっても楽しいのはもちろん、選手たち自身もまたエンジョイできるはずだ。
そして、選手の育成という観点からも、能力の高い選手たちにはもっとチャレンジングなサッカーをさせてほしい。
11月にインドネシアで開かれたU-17ワールドカップでは、日本代表が誇る攻撃陣がスピードでもフィジカルでも世界の強豪のDF相手に歯が立たなかった。
いつまでも、勝ちにこだわって慎重な試合ばかりしていたのでは、高校生年代で世界と戦える選手は生まれてこない。日本のサッカーの育成の一翼を担うのが高校サッカーなのだ。もっと上を目指して、もっと志を高く持って戦ってほしいのである。
2023年夏に開かれた全国高校野球選手権大会(甲子園)では、従来の高校野球の常識を疑う慶應義塾高校が「エンジョイ・ベースボール」を掲げて頂点に立った。近江高校の躍進を見て、「エンジョイ・フットボール」に夢を抱いたのは僕だけではなかったはずである。