■タイ代表との違い
一方、対戦相手のタイ代表も万全の準備からはほど遠かったようだ。
タイではリーグ戦が進行中で、12月28日にリーグ戦3試合が行われており、年明けの1月6日にもリーグ戦1試合が予定されている。石井正忠監督によれば、そうした試合に関わった(関わる)選手はフル出場させられない状態だったというのだ。
つまり、タイ代表も6人の交代枠を使い切ったが、こちらも日本戦を戦うための交代ではなく、監督にとってコントロールできない事情によるものが多かったようだ。
タイは前半は分厚い守備網を作って日本代表を無失点に抑えた。とくに、4-1-4-1(攻撃時には右サイドのパントポン・チャルンラッタナピロムが上がってツートップ気味になる変則システム)のアンカー・ポジションに入ったウィーラテップ・ポンパンは守備面で大きく貢献していた。
しかし、後半はウィーラテップが交代。タイ代表はアンカーを置かない4-4-2の布陣で戦った。
だが、石井監督は「前半と同じ形で戦うつもりだった」と話す。トレーニングの時間が十分ではなく指示がうまく伝わっていなかったというのだ。
新戦力の選手を多く使っても、いつもと違う組み合わせで戦っても代表チームのコンセプトを崩すことなく戦える日本代表とタイ代表との完成度の違いが、このあたりからも分かる。
日本代表では、森保監督が就任してから5年以上をかけて代表のコンセプトは代表候補となる選手たちに浸透しているし、新しく加わった選手にもトレーニングを通じてすぐにコンセプトを落とし込む努力が払われる。そして、日本人選手たちの戦術理解力も高い。だから、そのようなことができるのだ。