後藤健生の「蹴球放浪記」第193回「聖地マッカに近いジッダでW杯?」の巻(1)浦和サポーターが実感させる中東の変化の画像
1997年のフランスW杯1次予選ジッダ・ラウンドのADカード 提供/後藤健生

 クラブ・ワールドカップが、サウジアラビアで開催されている。浦和レッズも奮闘しているが、彼の国を知る蹴球放浪家・後藤健生の胸には不安が湧き上がる。サウジアラビアの本来の姿を知る人間ほど、ワールドカップ開催への懸念が募るのだ。

■入国困難だった国

 現在、FIFAクラブ・ワールドカップがサウジアラビアのジッダで開催されており、12月19日の準決勝では浦和レッズがマンチェスター・シティに挑戦しましたが、圧倒的な戦力差を見せつけられて完敗に終わりました。

 しかし、スタジアムには大勢の浦和サポーターが詰めかけており、彼らの歌声は画面越しでも大きく響いていました。僕は、その映像を見て「サウジアラビアは本当に外国人に対して門戸を開いたのだなぁ」ということを実感しました。

 1997年に「緊急ビザ」というものをもらって僕が初めてサウジアラビアに入った頃は、この国に入るのはかなり(いや、とても)難しいことでした(「蹴球放浪記」第11回「ジッダ空港放置プレー」の巻)。

 もう、「サウジに行ったことがある」だけでは自慢にはなりそうもありませんね。

 いや、サッカー記者やサポーターをしていたら、これからは何度もサウジアラビアに行かなくてはならなくなるはずです。

 先日、2024/25シーズンとその次のシーズンのAFCチャンピオンズリーグACL)の決勝大会(準々決勝以降)の開催国がサウジアラビアに決まりました。代表チームレベルの大会でもサウジアラビアは2027年のアジアカップの開催地であり、さらに2034年のワールドカップのサウジアラビア開催も決まりました。

 隣国カタールでも2022年にワールドカップが開かれており、来年の1月にはアジアカップも同国で開催されます。

 どうやら、これからは大規模な国際大会の多くが中東で開催されるようになるのかもしれません。

 理由はただ一つ。彼らは石油や天然ガスを輸出することで“無尽蔵”とも言えるお金を持っているからです。権力と富を独占する中東の王族は、超贅沢な別荘を世界各地に持っていますが、それでもお金の使い道に困っているそうです。

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