「最後までやっぱりかっこよかった」川崎・登里享平が退団するチームメイトに流した涙のワケ。「目に焼き付けたい」と話した“ラストダンス”【記憶に残った2023年取材現場(2)】の画像
ACL蔚山戦でウォーミングアップする川崎フロンターレの登里享平 撮影:中地拓也

 2023年に行ったサッカー取材の現場で、記憶に残る場面を紹介する。第2回目は、23年シーズンを最後に川崎フロンターレを離れることになったジョアン・シミッチと、そしてその背番号6に対する登里享平の言葉だ。

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 蔚山現代との対戦を終えたあとのミックスゾーンに、最初に姿を見せたのはジョアン・シミッチだった。この試合を前に契約満了がクラブから発表されており、アウェイでのACLグループステージ最終戦がラストマッチに。一区切りとなる試合を終えたブラジル人MFが、取材エリアに最初に入ってきた。

 前日にもこの蔚山スタジアムのミックスゾーンで話を聞いており、その言葉一つ一つに重みを感じていただけに最初に何を聞くべきか。そんなことを考えながらもまとめられずにいると、シミッチはニヤニヤしながら筆者の前をスルー。慌てて呼び止めると、背番号6はニヤリと笑って“何か話す?”というような仕草を見せた。

 ともすれば重くなりそうなミックスは笑顔で始まった。『エル・ゴラッソ』のT氏の質問に「いいゲームでした。立ち上がりもすごくいい状態で入りましたし、残念ながら阻止できたような2つの失点してしまいましたが、本当に全員が最後の最後に結果を求めて戦った」と答えたシミッチに、サポーターからのチャントについて聞いた。この試合を前に最後の姿を見ようと、多くの熱い声がSNS上で見られたからだ。

「やっぱり感情的なものは溢れてきました。3年間というフロンターレで過ごした間、今日来ていただいたサポーターの皆さん、そして今日来られなかった多くのファン・サポーターの皆さんが、どんなときも本当に自分を応援してくれて、力を与えてくれました。やはり最後の試合が終わったことで感情も溢れてきました」

 3年間を共に戦ったサポーターに、とても丁寧に言葉を紡いだのだった。

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