大住良之の「この世界のコーナーエリアから」第127回「小さくても、大きな意味をもっているはずのもの」(1)サッカー日本代表の偉業の証となる「緑の逆三角形」の画像
前列右端、遠藤航の手にあるのは… 撮影:中地拓也

サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト大住良之による、重箱の隅をつつくような「超マニアックコラム」。今回のテーマは、「一瞬のリスペクト」。

■セレモニーに不可欠なもの

 ドイツ北部、「フォルクスワーゲンの城下町」として知られる人口12万あまりのヴォルフスブルク。中央駅から大きな運河をはさんですぐ北にある「フォルクスワーゲン・アレーナ」、2023年9月9日午後8時40分過ぎ。

 ポルトガルのジョアン・ペドロ・シルバ・ピニェイロ主審を先頭に両チームが入場して整列する。そして試合前のセレモニーのハイライトである対戦チームの両国国歌吹奏が終わると、あとは急にあわただしくなる。ビジターチームが動いて4人の審判員と相手チーム11人の全員に握手、さらに今度はホームチームが審判団と握手。そのまま選手たちはチームごとに整列して「チーム写真」の撮影である。

 そしてセットされて数秒で撮影が終わると、両チームのキャプテンが審判団のところに走り寄り、コイントスとなる。対戦チームは、もちろん、ドイツ対日本である。ドイツはこの試合で初めてキャプテンを任されることになったイルカイ・ギュンドアン(FCバルセロナ)、日本はこの2023年に吉田麻也の後を継いでキャプテンとなった遠藤航リバプールFC)。

 シルバ・ピニェイロ主審は手にしたコインの裏表をビジターの遠藤に選ばせ、右手の親指ではじいて宙に浮かせると、そのまま右の手のひらで受け止める。出たのは遠藤が選んだ逆面。ギュンドアンは迷わずに「ボール」を選択、遠藤はチームのベンチ側のエンドを指し示した。

 そしてようやく、今回の「主役」である小さな旗が登場する。ギュンドアンと遠藤は、しっかりと握手をかわし、軽く抱擁しあうと、それぞれ手にして入場してきた「ペナント」を交換し、試合前のセレモニーがすべて終了するのである。

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