■鹿島の「DNA戦略」
そこに昌子も加わって、バチバチとぶつかり合い、お互い要求しあうような空気感を作り出してほしかったが、昌子が3~4月の4連敗の後、関川郁万の台頭を許し、出場時間が激減してしまった。
「昌子はピッチ外で貢献してくれた。強い思いを持って帰ってきてくれたし、感謝している」と吉岡FDは語ったが、発信力に秀でる昌子がピッチにいない状況が長く続くというのは、岩政大樹監督にとっての誤算だったのでないか。昌子はどんな時でも前向きに振舞う男だから、吉岡FDが言うようにベンチからも声を出して盛り上げてはいたが、試合に出られない状況に苦悩したはず。鹿島のDNAをチームに還元する余裕は持てなかっただろう。
9月にスペインから戻ってきた柴崎岳がケガで離脱したことも、鹿島にとっての足かせになった。中盤に彼がいれば、佐野や松村のような若手をリードし、樋口雄太ら中堅世代を伸ばすべく力を尽くしたに違いない。
柴崎自身、尊敬する先輩・岩政監督の役に立ちたいと思って復帰を決断したはず。その働きが十分にできなかったうえ、指揮官との共闘体制がわずか3カ月で終焉を迎えた。本人も悔しさを覚えているのではないか。
レンタルから復帰させた垣田裕暉や須藤直樹輝らの活躍度も踏まえると、鹿島の「DNA戦略」は大成功だったとは言い切れない。ただ、それを続けていく以上は、新監督率いる体制に移行する来季も彼らに大きな存在感を示し続けてもらうしかない。