■「いや、俺もサブいやですよ、もちろん」

 そんな前向きで明るい姿勢が、川崎のチームにもたらしたものは大きい。J1リーグ開幕戦の横浜F・マリノス戦で川崎デビューを果たしたが、後半からの途中出場。その後も出場機会は重ねたものの途中出場が続き、リーグ戦での初先発は8月12日まで待たなければいけなかった。

 その初先発直前の8月2日、川崎は天皇杯ラウンド16として高知ユナイテッドSCと対戦。苦戦しながらも、途中出場した佐々木旭のゴールで勝利を掴んだ。試合後、その佐々木に話を聞くと、瀬川祐輔の存在が大きかったと明かした。ベンチスタートの選手の気持ちをいつも盛り上げてくれたことで、自分のモチベーションにつながったというのだ。

 それについて瀬川に聞くと、「いや、俺もサブいやですよ、もちろん」と話し、「だから、自分に対しても盛り上げる気持ちが強いですよ、悔しいですから、サブになったら。でも、サブになった以上はサブが試合を決めたいですし」と続け、「僕も悔しい気持ちを抑えながら、盛り上げてます」と心情を明かした。

 そういう盛り上げる姿勢と、「常にサブは、スタメンのすぐ後ろを走っているんだぞっていうのをスタメンの選手に見せなきゃいけない」という強気な姿勢が川崎にもたらしたものは計り知れない。

「僕も30歳なので、チームのことも考えないと」

 こう話す瀬川にとって、12月9日のタイトルマッチは古巣・柏レイソルとの対戦となる。ここまでの1年間で、川崎ではウイングから左サイドバックまでさまざまなポジションで出場して、チームに貢献した。「どんなポジションでもいいから出たい」と話すほどに、この一戦へ向ける気持ちは強い――。

(取材・文/中地拓也)

(後編へ続く)

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