■「南の最果てでサッカーをして、最後はこの北で」
小野の言葉が心の支えになっていたという小泉は「南の最果てでサッカーをして、最後はこの北で。不思議な感じですけど……あの時に琉球でシンジさんに会わなかったら、今ここにいるかも分からないというか。僕のサッカー人生も違ったものになっていると思う」と語る。その小泉に、小野も「浦和レッズの方に行きましたけど。今はレギュラーとしてバリバリやってる彼を見ていて、これからの日本サッカーをどんどん牽引していって欲しい」と期待を込める。
小泉に小野から継承できるものを聞くと「浦和の8番と言ったら、僕の中ではシンジさんなので。そこにどれだけ近付けるかというところ、僕自身が身を粉にして。なんかこう、まあでも……シンジさんみたいにはなれないなって」と回答してくれた。もちろん小野の技術や天才的な閃きというものは誰にも真似できないだろう。しかし、小泉はそういうもの以上に、周りの人間を幸せにする不思議な力というものを実感している。
「周りの人にポジティブな影響を与える力。幸せになる感じが。それはシンジさん独特のもので、本当に偉大……まあでも、本当に同じチームでやれたことで、シンジさんにも感謝してますし、その偶然というか運命にも感謝している」
そう語る小泉は偉大な選手のラストマッチについて改めて「胸の奥では色んな感情がありましたけど、僕だけのシンジさんではないので。浦和サポーターにとっても特別だし、札幌の選手にとっても、札幌のサポーターにとっても特別な人だと思うので」と言葉をつなぎながら、「でも個人としては特別な思いを持っていました」と噛み締めた。多くの人に影響を与えてきた小野伸二の存在。その一人である小泉がここからどういった選手になって行くのか。小野も”人をワクワクさせる選手”を見守って行くはずだ。
(取材・文/河治良幸)