■選手だけの責任ではない
柏戦でのPK戦の際、ベンチ前で肩を組んだ監督以下スタッフと選手は、視線と気持ちをピッチに向けていた。チョン・ソンリョンの金コーチはピッチにひざをついて両手を合わせて祈っていた。鬼木監督自身、「(ソンリョンが)止めることと、(相手のキックが)外れること、そこを祈るだけだった」と試合後に明かしている。
多くの人が祈るほどの重責――。それでも鬼木監督は、PKの失敗を選手に背負わせる気はない。「僕が指名しているので、僕が突っ込まれなきゃいけない」とも話していたからだ。
川崎フロンターレはACLでもラウンド16に勝ち上がっており、国際舞台でもPK戦に挑む可能性がある。天皇杯決勝という大舞台でPK戦を勝ちぬいた経験は、タイトル獲得という栄光だけでなく、次の勝利につながるものといえる。
(取材・文/中地拓也)