■ソンリョンが明かす、前日のPK練習での失敗

 そういう下地に加え、前日練習が結果的に生かされた場面もあった。1つは、11人の中から1人がキッカーから外れなければならなかった場面だ。柏が負傷で1人蹴ることができなかったため、公平を期すために川崎も1人選手を外すことになった。

 それがジェジエウだったのだが、鬼木達監督は試合後の会見で、「相手と合わせて1人で減らさなくちゃいけなかったので、前日の練習を見て決めました」と明かしている。ジェジエウ自身、この試合を前にした取材対応で“試合勘”を戻すことに力を注いでいると口にしており、前日の様子と復帰直後という状況を合わせて考慮しての選外となった。

 そしてもう1つが、ソンリョンのキックだ。GKが蹴る異例の展開となりながらも、見事なキックを見せてチームに勝利をもたらした守護神。実はソンリョンも前日にPKキックの練習をしていたというが、「昨日はカミ(上福元直人)に止められたんですよ。試合前にはPK練習をGK同士でしていて、いつもが決められるのに、今回は入れられなかった」と失敗していたことを明かす。

 しかも、「昨日は上に蹴ろうとしたのに、下に行っちゃったんですよ」と振り返るが、ソンリョンはそんなコースに本番で見事に決めて見せた。「グラウンドが悪くて穴も空いていましたけど、落ち着いてインサイドで決めました」という前日の練習を当日のピッチコンディションに合わせればこそ、結果につながったのだった。

(取材・文/中地拓也)

(後編に続く)

(2)へ続く
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