■誰も経験がない過酷な日程

 最終的に甲府の「ACLホーム」となったのが、甲府のホームタウンから120キロ以上離れた東京の国立競技場だった。2021年夏に行われた東京オリンピックのためにつくられた最新の巨大スタジアムである。甲府はJ1にいたときにもホームゲームの平均入場者数は1万1000人程度、J2では「コロナ前」の2019年で8273人だった。そのうえACLは火曜日あるいは水曜日の夜に行われる。それを6万8000人規模のスタジアムでやろうというのである。

 しかし「甲府のホーム」ということを考えると、ACLの基準を満たすスタジアムとしては新宿に近い国立競技場しかなかった。午後7時キックオフの試合。9時に終了すれば、午後10時と11時に新宿を出発するJR中央線の特急で甲府まで戻ることができる。高速道路の便もよい。

 だが、J2は日本のトップクラスで最も日程が厳しいリーグである。22クラブのホームアンドアウェー方式で全42節。2月中旬に開幕して11月中旬の閉幕までほぼ毎週末に試合があり、4月と5月にはウイークデーの試合もはいる。そのなかに、わずか6試合といっても、東アジアから東南アジア、さらにはオーストラリアを含めてのアウェーゲーム3試合を含むACLのグループステージが入るのは、誰も経験したことのない過酷な日程と言えた。

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