パレスチナでの紛争に、世界が不安の目を向けている。その影響を、日本も他人事とは考えていられない。サッカー界でも、中東は存在感を増している。良くも悪くも中東が影響を与えるサッカー界でのパワーバランスについて、サッカージャーナリスト・後藤健生がつづる。
■再び起きた紛争
アジアのサッカー界における中東諸国の影響力は、当分の間は盤石のように見える。
そんな時に発生したのが、今回のパレスチナ紛争だった。
10月7日に、パレスチナのガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスが、突然、イスラエルに対してロケット弾やパラグライダーを駆使した奇襲攻撃を決行。イスラエル人1400人以上が死亡し、約230人が人質として拉致と伝えられている。
そして、イスラエルはこれに対する報復としてガザ地区を封鎖したうえで、空爆を繰り返し、ついに地上部隊もガザ市街への攻撃を始めたようだ。
200万人以上が狭い地域に閉じ込められて暮らすガザ地区に対する空爆や地上侵攻によって、これまでに1万人近くのパレスチナ人が生命を落とし、犠牲者の数は大幅に増えていくはずだ。
イスラエル当局は最大の支援国であるアメリカによる一時的停戦の呼びかけにさえ応えず、人道を顧みないイスラエルに対しては、世界各国で非難の声が上がっている。
こうした中で、パレスチナのヨルダン川西岸でも散発的に紛争が起こっており、さらに国境を接するレバノンにあり、イラン系シーア派組織ヒズボラもイスラエルに対する攻撃を準着しており、それをシリア政府も支援しているとも伝えられている。
ヒズボラの本格的イスラエル攻撃やイランの参戦などがあれば、パレスチナ紛争は一気に大規模な戦争に発展する可能性がある。
そうした大戦争にならないにしても、中東各地で、あるいはアラブ系、ユダヤ系のコミュニティーが存在するヨーロッパ諸国ではテロ行為が発生する可能性が高まっていく。