■「戦略」の背景

 なでしこジャパンの池田太監督がこうした「戦略」を選んだのには背景がある。予選の大会方式である。少し詳しく今回のアジア予選の大会方式を説明しておこう。

 今回のアジア予選には31か国がエントリー、2022年12月現在のFIFAランキング上位5か国(北朝鮮、日本、オーストラリア、中国、韓国)がシードされて1次予選を免除され、2次予選に進んだ。他の26か国は、7組(4か国×5組と3か国×2組)に分けられてそれぞれ1回戦総当たりの集中開催方式でリーグ戦を行い、各組1位、計7チームが2次予選に進んだ。

 計12チームによる2次予選は、2023年3月現在のFIFAランキングにより4チームずつ3組に分けられた。A組のトップシードはオーストラリア(10位)、B組は中国(13位)、そしてC組は日本(11位)である。B組には、FIFAランキングでアジア4位の韓国(17位)と、2020年以来国際試合がなかったため前回のFIFAランキング発表時の10位からいきなり「順位外」に落ちた北朝鮮が入り、文字どおり「死の組」となった。

 2次予選も、各組1回戦総当たりの集中開催方式。A組はオーストラリアのパース、B組は中国の厦門(アモイ)、そしてC組はウズベキスタンのタシケントが会場で、日程を合わせ、10月26日に第1戦、29日に第2戦、11月1日に第3戦となった。この2次予選は、各組1位とともに2位3チームのなかで最も成績(勝ち点、得失点差、総得点)の良い1チーム、計4チームが勝ち抜き、来年2月の3次予選(最終予選)に進む。

 ここまでは、まあ、いいとしよう。しかしこの3次予選が、2チームずつを組み合わせた「ホーム・アンド・アウェイ」方式とされたことが問題である。このいわば「準決勝」で勝ち抜いたチームがパリ・オリンピックへの切符をつかむのである。すなわち、準決勝でどこと当たるかが、大きな問題となってくるのである。「決勝戦」はない。

 しかもその組み合わせは、どの組の2位が3次予選に進んだかにより、あらかじめ決められていた。A組の2位が残った場合、「準決勝」の組み合わせは、「C組1位×A組1位」と「B組1位×A組2位」、B組2位の場合には、「A組1位×B組1位」と「C組1位×B組2位」、そしてC組2位の場合には、「B組1位×C組1位」と「A組1位×C組2位」である。

(2)へ続く
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