なでしこジャパンの戦いぶりが、話題となった。今年の女子ワールドカップで話題となったような果敢な戦いぶりではなく、その対極にある姿勢が問題視されたのだ。そうした戦いぶりはどうして生まれ、今後にどういう影響を及ぼしかねないのか、サッカージャーナリスト・大住良之がつづる。
■ウズベキスタン戦の違和感
サッカーは、ときにきれいごとでは済まされない。それはよく承知している。しかしこれはやり過ぎだ。なでしこジャパンが来年のパリ・オリンピックへの出場権をかけて戦ったアジアの2次予選、10月29日にウズベキスタンのタシケントで行われたウズベキスタンとの一戦である。
なでしこジャパンはキックオフとともに猛攻に出た。そしてわずか15秒で決定的なチャンスをつかむ。FW千葉玲海菜が近距離から強烈なシュートを放ったが、これはGKの好セーブにあった。ホームのウズベキスタンは3分にパスをつないで日本の守備を崩したが、シュートはわずかに外れた。
だが、サッカーらしかったのはここまでだった。以後は日本が一方的にボールを支配して攻め続け、10分にはDF遠藤純の左CKをファーポストでDF南萌華が豪快なヘディング・シュートで決め、15分には遠藤のパスを受けたFW千葉が左の角度のないところからGKの上を越すシュートを決め、2-0と差を広げた。
そして突然、そこから異常な試合となった。なでしこジャパンはそれまでと同様、テンポ良くボールをつなぎ、サイドに回して突破を図るのだが、突破しかかってもクロスは送らず、ターンしてDFに戻し、それを逆サイドに展開すると、そこでも突破しかけながらターンしDFに戻すということを飽くことなく繰り返したのだ。
最初は、そうして相手を出てこさせ、スペースができたところを突こうという考えなのか、あるいは、パスを回して相手を疲れさせようという狙いなのかと思われた。しかし驚くべきことに、このプレーは前半の残り30分間、そして後半の45分間にわたって延々と続けられたのである。