日本サッカーにとって、ベトナムは縁のある国である。ベトナム代表チームを率いるのは、元日本代表監督のフィリップ・トルシエだ。先日のなでしこジャパンのように、代表チーム同士の対戦もある。蹴球放浪家・後藤健生にとっても、ベトナムは思い出深い地なのだ。
■フランス人が変えたベトナム語の表記方法
ベトナムは中国文明圏の国です。そして、ベトナム人のマジョリティーであるキン(京)族は、現在の中国大陸南部から南下してきた人たちで、話しているのも中国系の言葉です。
ですから、ベトナム語も昔は漢字で書かれていました(ベトナム独自の文字として「チュノム」という文字も存在しますが、日本語のひらがな、カタカナとは違って、漢字と同じような字形をしています)。
しかし、19世紀からベトナムを支配したフランスの宣教師たちがベトナム語をローマ字で表記する方法を考案し、今ではそれがベトナム語の正書法になっているので、今のベトナム人は漢字をまったく読めないのです。ローマ字にさまざまな記号がくっついて複雑になっていますが、漢字より覚えやすいことは間違いないでしょう。
たとえば、「ベトナム」という国名も漢字では「越南」ですが、ローマ字では「Viet Nam」となります。ちなみに、正式な国名は「Cong hoa xa hoi chu nghia Viet Nam」です(複雑な記号は省略)。声に出して読んでみると、漢字が思い浮かぶかもしれません。そのまま漢字にすると、こうなります。「共和社会主義越南」。語順を改めると「ベトナム社会主義共和(国)」です。