サッカーを楽しくするのは「いい加減」【VARとハンドとオフサイトの関係を考える】(3)の画像
プレーとルールの関係を考える(写真はイメージです) 撮影:中地拓也

 サッカーは年々、進歩している。近年では、競技を取り巻くテクノロジーも驚くべき早さで進歩している。こうした進化と、競技と我々はいかに共存していくべきなのか。サッカージャーナリスト・後藤健生が考察する。

■「時間」との付き合い方

「判定に時間がかかる」というのには、2つの意味がある。

 一つ目は、いわゆる「オフサイド・ディレイ」である。実際にはオフサイドではなかったのにフラッグを上げてプレーを止めてしまうことを避けるために、副審はオフサイドだと思ってもフラッグは上げず、アシスタントVARがオフサイドであることを確認してから、オフサイドのフラッグが上がり、レフェリーが笛を吹く。

 この間、長ければ数秒かかることもある。

 しばらくプレーが続いてからオフサイドのフラッグが上がるのは観客にとって大きな興覚めだし、フラッグが上がらないからFWの選手は「自分はオフサイドではないか」と思いながらもプレーを止めるわけにはいかないし、当然、DFもプレーを続ける。攻撃側、守備側の選手たちは余計な労力を使って疲労を蓄積させるし、最悪の場合、オフサイドの場面なのに肉体的接触が起こって選手が負傷するリスクだってあるのだ。

 あるいは、プレーが続いた後、守備側がボールを確保して、そこからボールがつながってカウンターに移ろうとした瞬間にフラッグが上がって、ホイッスルが鳴り、ゲームが途切れてしまうこともある。

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