■113円で世界を駆け巡る

 さて、2012年、ロンドン・オリンピック開幕の4日前、私はロンドンに到着した。サッカーは開会式の2日前に女子の試合がスタートする。7月23日の夕刻にロンドンに着き、翌日はロンドンのメインメディアセンターで大会の取材パス(AD)を受け取り、女子開幕のカナダ戦が行われるコベントリーに移動して翌日の試合に備えるというスケジュールだった。

 パディントン駅近くのホテルの部屋に荷物を放り込むと、私はひさびさのロンドン散歩に出かけた。「オリンピック前夜」と言っても開会式は4日後。街角には観戦客のためのインフォメーションが出ていたが、まだのんびりとした空気だった。するとあるキオスク(新聞・雑誌やお菓子、雑貨などを販売する路上店)の表につってある絵はがきが目に止まった。今夜は書かなければならない記事もない。ロンドン到着を伝える絵はがきでも書くかと、数枚を手にとり、「この絵はがきを日本に送る切手もありますか」と聞いてみた。半ば、翌朝郵便局を探すしかないと思っていたのだが…。

 「あるよ」

 あっさりと答えが返ってきた。そして彼が取り出してきたのは、4枚1セット、ロンドンの街角をプリントしたきれいな切手だった。さすが「近代郵便制度発祥の国」である。

 「これ1枚で、世界のどこにでも航空便で出せるよ」

 値段は、4枚で3.6ポンド、1枚は90ペンス(当時のレートで約113円)ほどだったと思う。2階建てバス、ロンドン塔、電話ボックスなど「ロンドンそのもの」の切手がうれしかった。ちなみに、現在は絵はがき1枚を航空便で日本に送るのに、1.25ポンド(約228円)もかかる。もうひとつちなみに。日本からなら、現時点で海外に航空便で絵はがきを送るには、100円切手を1枚貼ればよい。

 翌日、コベントリーでキオスクをのぞくと、伝説の「ゴダイバ夫人」像など、たくさんの絵はがきがかかっていた。英国では、取材に行われる町々のキオスクで簡単に絵はがきを買うことができた。さすがに「ご当地切手」は、ロンドン以外では手にはいらなかったが、行く先々の町から苦労することなく日本の友人たちに絵はがきを送ることができたのである。

(2)へ続く
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