大住良之の「この世界のコーナーエリアから」第123回「サッカージャーナリストが『絵はがきじいさん』をする理由」(1)きっかけは2012年のロンドン・オリンピックの画像
スタジアムだけでなく、その町の人気クラブの絵はがき、大会ポスターの絵はがき、そしてユーモアあふれるサッカー絵はがきなど、筆者の手元には数多くの「サッカー絵はがき」が集まるようになった (c)Y.Osumi
 サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト・大住良之による、重箱の隅をつつくような「超マニアックコラム」。今回は「10グラムの思い」。

■10年以上続く恒例行事

 私は「絵はがきじいさん」である。そう呼ばれるようになって、もう10年以上たつ。

 海外取材に出かけると、現地から日本の友人たちにせっせと絵はがきを書く。1日に10通以上投函することも珍しくない。ちなみにはがきは「1枚」「1通」「1葉」などとさまざまな数え方があるらしいが、私が投函するのはどう考えても「1葉」などという情緒のあるものではない。私の感覚では、「絵はがきを10枚買って、8通投函した」という具合なのである。

 1974年のワールドカップ西ドイツ大会で始まった私の外国旅行は、ほぼ100パーセントと言っていいほどサッカーの取材である。行き先は、当然、日本代表の試合や世界的なビッグゲームが行われる都市で、後藤健生さんほどではないにしてもたくさんの国を訪れているわりには、とても偏っている。「ハワイには行ったことがない」と話すと、一瞬は驚かれるが、相手はすぐに「そうだろうな」という顔をする。

 この10年間、私はそうした取材先からせっせと日本の友人たち(そしてドイツやオーストラリア、フランスなどにいる友人たちに)絵はがきを書いてきた。

 きっかけは2012年のロンドン・オリンピックだった。

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