■古代に思いを馳せて

 僕は、高校時代から古代史に興味を持っていました。

 奈良盆地は、古代日本の政治の中心地でした。飛鳥(あすか)をはじめ、奈良盆地の各所には宮殿跡や古墳のような遺跡。古い寺社仏閣などが点在しています。そして、奈良盆地には古代の道路が縦横に張り巡らされており、「大和古道」と呼ばれています。

 南北方向には、東(三重県寄り)から順に山辺の道、上ツ道、中ツ道、下ツ道があり、東西には横大路という道路が走っていました。横大路は、藤原京や大和三山の北を通って、生駒山脈の二上山(ふたがみやま)近くの峠を越えて、河内(かわち=大阪府南東部)の太子町(たいしちょう)に抜けるのです。「太子」とは、聖徳太子のこと。町内には聖徳太子ゆかりの斑鳩寺(いかるがでら)もあります。

 僕は飛鳥の数々の遺跡や法隆寺などを観光してから、9月3日の朝、勇躍大阪に向かいました。フェレンツバロシュとの試合は、15時キックオフの予定です。

 僕の計画は、竹ノ内街道(国道166号線)を歩いて二上山南の竹内峠を越えて太子町に出て斑鳩寺を見物。近鉄南大阪線の上ノ太子駅で電車に乗って長居に向かうというものでした。

 竹ノ内街道は、古代には中国の隋王朝の使者なども通った重要な街道です。

 しかし、9月といってもまだ上旬のこと。真夏の日差しが照り付ける中での峠越えはかなりハードな行程でした。途中、トラックで通りがかった地元の人が「乗ってけや」と言ってくれたのですが、それも丁重にお断りして、なんとか無事に徒歩での峠越えに成功しました。今となっては、20歳の自分の元気さが羨ましく感じられます。

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