■選手時代につながるサッカー観
さて、4月21日の午後。僕は練習が終わると再び練習場脇のプレハブの建物で待っていました。すると、アンチェロッティがサッカー・シューズのまま、ガチャガチャ音を立てながらやって来ました。
どんな内容の話をしたのか、今となっては記憶も曖昧ですが、「前日のお詫び」のつもりなのか、30分くらいという約束を大幅に超えて1時間半近く話してくれました。
イタリアのサッカー人はみな「最近チャンピオンズリーグで好成績が出ないのは、国内リーグが厳しすぎるせいだ」と言っていましたが、アンチェロッティもそういう意見らしかったのと、「新しいスタイルのサッカーをするのはリスクが大きい」といった比較的保守的なサッカー観を語ってくれたことを覚えています。
アンチェロッティは1980年代後半のACミラン全盛期にアリゴ・サッキ監督の下でプレーしていましたが、チャンピオンズリーグでも3回優勝してトヨタカップで来日していましたから、日本人にも馴染みのクラブでした。
ルート・フリット、マルコ・ファンバステンの攻撃陣、フランコ・バレージ、パオロ・マルディーニといった守備陣。それに、サイドアタッカーにはロベルト・ドナドニもいました。そんなスター軍団の中で、守備的MFのアンチェロッティはとても地味な(しかし重要な)存在でした。
ですから、インタビューをしながら「保守的なサッカー観は、選手時代と同じなのかなぁ」と思った記憶もあります。