今シーズンのJ1リーグも、残り5試合となった。先週末には首位ヴィッセル神戸と2位横浜F・マリノスによる頂上決戦があった。この一戦から見えてきたタイトルの行方について、サッカージャーナリスト・後藤健生がつづる。
■横浜FMが持ち込んだトレンド
サイドバックがタッチライン沿いをオーバーラップするだけでなく、インナーラップでウィングをサポートしたり、ボランチの位置からさらに相手陣内のバイタルエリアまで進出する……。
これは、日本では横浜FMの前監督、アンジェ・ポステコグルーによって持ち込まれた戦い方だ。サイドバックの攻撃参加は横浜FMにとって大きな武器となった。そして、こうしたサイドバックの攻撃参加は今では多くのチームが取り入れることになった。
わずか数年の間に、サイドバックの攻撃参加はJリーグのトップチームだけでなく、あらゆる年代のあらゆるカテゴリーの試合で当たり前の戦術になってしまった。しかし、それでもやはりサイドバックの攻撃参加は横浜FMにとって、重要な武器であることは間違いない。
神戸は、そのサイドバックが攻め上がるスペースを埋めてきたのだ。
横浜FMの最終ラインでのビルドアップの能力は、やはり今でも高いレベルにある。「そこに無理にプレスをかけていっても、ボールを奪うのは簡単な作業ではない」。神戸首脳陣は、そう判断したのではないだろうか。
そこにエネルギーを割くよりも、守備のゾーンをもう少し下げることになっても、サイドバックの攻撃参加のルートを塞ぐことによって、横浜FMの攻撃をノッキングさせるという判断だ。