大住良之の「この世界のコーナーエリアから」第121回「サッカー選手の勲章・国際試合出場数を「キャップ」で数える理由」(5)「わずか1キャップ」にもめげなかったチェルシーのスター選手の画像
サッカー選手にとって、キャップは勲章である(写真はイメージです) 撮影:中地拓也

 サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト・大住良之による、重箱の隅をつつくような「超マニアックコラム」。今回のテーマは、サッカー選手の勲章である「こだわりの帽子」。

■1キャップの男たち

 さて、私の手元に1冊の本がある。2001年にロンドンで発行されたグレアム・ロイド著『ONE CAP WONDERS~THE ULTIMATE CLAIM TO FOOTBALL FAME(驚嘆すべき1キャップの選手たち~サッカーの名声に対する究極の問いかけ』(Robson Books刊)。なんと、キャリアを通じて「1キャップ」しか得られなかった選手たちを、ポジション別に2人ずつ取り上げて、300ページ近い書籍にしているのである。

 前書きには、チェルシーで「神童」と言われたジョン・ホリンズの事例が紹介されている。祖父も父も3人の兄弟もプロサッカー選手という「サッカー・ファミリー」に生まれ、17歳でチェルシーのトップチームにデビューした選手である。あふれるような才能をもち、しかもハードな動きをいとわないプレースタイルはたちまちファンの心をつかみ、後にはチェルシーでキャプテンも任された。

 日本で「ダイヤモンド・サッカー」(東京12チャンネル=現在のテレビ東京)が始まった1960年代後半、ホリンズはイングランドのスターのひとりであり、少年のような甘いマスクとともに日本にもたくさんのファンがいた。その彼がイングランド代表に呼ばれたのは1967年5月24日、まだ21歳の誕生日を迎える前だった。ウェンブリー・スタジアムで行われたスペインとの国際親善試合である。

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