■安心できる「センサリールーム」
そのような感覚過敏の子どもたちにとって、サッカー観戦は本来、安心して楽しめるものではないかもしれない。それでも、そのような発達障がいがある子どもたちとその家族にも楽しんでもらえないかと一歩を踏み出しているのが川崎フロンターレである。
『えがお共創プロジェクト』と名付けたその企画に初めて取り組んだのは2019年のこと。感覚過敏などの理由で外出やサッカー観戦が困難な子どもとその家族に、安心して観戦できる特別な環境を用意して楽しんでもらおうといったものである。
今年のその舞台となったのが9月29日に行われたJ1第29節のアルビレックス新潟戦だった。会場である等々力競技場の一室に、11組33人を招いた。先述したように19年から始まったこの取り組みだが、コロナ禍の影響で一時中断。昨年が3年ぶりの開催となり、今年は選手との交流も復活して行われた。
部屋は、照明が落とされた広い空間で、真下にピッチが広がる場所である。観戦するための場所は2種類ある。1つはテラスシートで、野外で試合を観ることができる。もう1つは室内で、音や照明の刺激が少ない環境だ。
さらに、センサリールームも設けられた。これは、感覚過敏の症状があっても安心して過ごすことができる部屋のことで、そのための装備がなされている。観戦中に不安になることがあっても、あるいは、飽きてしまったとしても、一度、そこでリラックスができるのである。