【J1川崎と“サッカー観戦が困難”な発達障がいの11人(1)】笑顔を創る企画で小学生が泣き出したワケと、参加者の母親が「とにかくうれしい」と感じた息子の一言の画像
新潟戦で川崎フロンターレの選手を迎えたのはこの日集まった子どもたちだった 撮影:中地拓也
■【画像】不安や飽きてしまった時のために特別に用意された「センサリールーム」と、子どもたちの観戦した部屋の様子■

 取材していた記者にとって、予想外の瞬間だった。笑顔になるだろう場面で、一人の小学生が泣き出してしまったのだ。2023年9月29日の等々力競技場。照明がかなり落とされた部屋の中で、その子の前にいたのは、プロサッカー選手だった。

 彼らが直接的に泣かせたわけではない。ただ、その8選手を前にしたその女の子は涙を流してしまったのだ。

 思わず、聞かずにはいられなかった。いきなり話しかけて驚かせてはいけないと思い、母親に話を聞いてからその子に質問すると、その理由をこう答えてくれた。

「うれしかったから」

 ゆっくりと、でも、丁寧に発したその言葉は、彼女の心がいい意味で動かされたことを教えてくれた。

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 サッカー観戦の醍醐味はなんだろうか。たとえば、Jリーグ会場を訪れた人100人に聞けば、それぞれの答えが返ってくるだろう。

 愛するチームを勝たせるため、自分が推している選手の活躍を見届けたいといったものから、あの熱狂の中に身を置きたいから、あるいは、スタジアムグルメも含めた非日常感を味わいたいという人もいるだろう。それが、Jリーグではなく高校サッカーや日本代表の試合会場に行けばまた変わるはずだ。

 とはいえ、そうした楽しみは大まかに言えば臨場感や非日常がもたらす刺激に収れんされるのではないか。しかしながら、それが苦手な人もいる。大きな音や光が、そして、人混みや予期せぬ流れが、体の持つ感覚や気持ちをざわつかせるのだ。

PHOTO GALLERY ■【画像】不安や飽きてしまった時のために特別に用意された「センサリールーム」と、子どもたちの観戦した部屋の様子■
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