■「そんな状況でもいろいろと譲ろうとする」
その時のFWゴミスの様子に感心したのが鬼木監督だった。「俺みたいな体の小さい人はいいけど」と鬼木監督は振り返るが、実際、FWゴミスの体はかなり大きい。すでに出場した試合でもその体躯の強靭さを示しているように、きっと、エコノミー席では難儀した部分もあったはずだ。
しかし、指揮官は「でも彼はえらいですね」と目を細める。「そういうのも全然、文句を言うどころか“いい経験だ”みたいな感じで。むしろ、そんな状況でもいろいろと譲ろうとするし。やっぱりそういうのはすごいなと思いますね」と言うのだ。
コンディション向上に努める中、その体躯に合わない席での試合出場翌日のフライトで、時間も遅れていたが、FWゴミスは一切動じず、そして、不平不満も口にせず、周囲を気遣う様子を見せていたという。
湘南戦を控えた9月22日、鬼木監督にFWゴミスが入った影響を聞いたところ、その最初に出てきた回答は「パッション」というものだった。直訳すれば「激しい感情」や「情熱」の意味を持つこの言葉を使って、「全部だと思います」と説明したのだ。
つまり、単にポジション争いという枠ではなく、その振る舞いも含めて多くの部分で刺激を与えているということ。その後、鬼木監督はポジション争いの部分についても、以下のように説明した。
「彼が入ったときに、“この競争はFWだけではないよ”っていう話はチームにしてます。単純にFW陣のところで誰かがメンバーから外れていきますし、ゲームプランもあるので、そこの刺激は確実に入っているのかなと。競争をやっていくしかないというのは、全員があるとは思ってます」