脇坂泰斗の後輩思いのパスが、試合を動かした。前半11分の先制点の場面だった。
湘南ベルマーレはクラブの30周年記念事業の一つとして9月24日の川崎フロンターレとのホームゲームを国立競技場で開催。湘南の動員記録を更新する5万4243人を集めたスタジアムは、ホーム湘南をサポートする大声援に包まれていた。ACLのジョホール・ダルル・タクジム戦の倍以上の観客を収容した国立競技場は、一種独特の雰囲気になっていた。
そんな試合を動かしたのが、脇坂から山田新に通った1本のスルーパスだった。レアンドロ・ダミアンが収めたボールを引き取った脇坂が、スペースに走り込む山田に対し、ピタリと合わせたものである。
「トラップしたら、彼(山田)はミスする選手なので(笑)。トラップさせないように、優しくワンタッチで打てるようなボールを、心がけました」
本音とも冗談とも付かない言葉ではあったが、イタズラ心が笑い顔になって出ている脇坂の言葉を聞いて爆笑する取材陣に対し、脇坂は、自らのパスに込めたメッセージを山田がきちんと感じ取ってくれたのだと続けた。
「“ワンタッチで打てよ”っていうパスを、(山田が)ちゃんと感じ取ってくれました。シュートは素晴らしかったです。ホントに」
インパクトの瞬間、ゴールに対し体を開き、ニアでもファーでも打てる状態を作った山田は、最終的にファーを選択。少し巻きながら、かつしっかりとコースを狙い、ダイレクトで蹴り込んだ。その山田のシュートを褒める脇坂は、「先制点が一番大事だと思っていましたし、FWが、ストライカーが取るというのは、よりいいことだと思いますし。立ち上がりだったし、良かったかなと思いますね」と述べ、FWの山田が決めたことに意味があるのだとしていた。