■関心高まる次のキャリア
そうなると、関心が高まるのは、伊東の今後のキャリアである。昨夏、ベルギー1部のゲンクから欧州5大リーグに駆け上がった彼だが、今夏は動くことなく残留。8月12日の開幕・マルセイユ戦からいきなり今季初ゴールを挙げ、その後もコンスタントにフル出場。数多くの得点チャンスを作り出している。今のスタッド・ランス攻撃陣にとって伊東の存在は不可欠。ウイリアム・スティル監督も全幅の信頼を寄せている。
ただ、年齢を重ねれば重ねるほどグングン伸びていく伊東には、UEFAチャンピオンズリーグなど大舞台に出られるような環境で、もう一段階、飛躍してほしいという期待も大きい。この日のドイツ戦を見れば、十分そういうクラブでもやれると誰もが痛感したはず。今夏、30歳でリバプールに引き抜かれた遠藤に続く30代の成功ロードを歩むべく、ここからさらに突き進んでくれれば理想的だ。
今冬の移籍市場で具体的なアクションが起きるように仕向けるためにも、中2日で迎える12日のトルコ戦(ゲンク)で再び結果を残すことが肝要だ。伊東が出るとしたら途中からだろうが、次の試合会場は彼が5シーズンを過ごした古巣の本拠地。クラブ関係者も凱旋を心待ちにしているだけに、目覚ましい成長を印象付ける必要がある。
「楽しみにしているとスタッフも言っていたし、サポーターも来てくれると思う。自分のよさをゲンクの人に見せたいし、成長したところも見せたい。ゴールに絡めればいいかな。一番は目に見える結果なんで」と本人も意欲を示していた。
ある意味、今は三笘以上に鋭さと怖さを持っている伊東純也。20代半ばまで無印で、その後急激に伸びた稀有な存在がドイツ撃破の原動力になったことは、日本サッカー界の底力の証明でもある。雑草魂を持つ男のさらなる快進撃、異例のステップアップを楽しみに待ちたい。
(取材・文/元川悦子)