さらにもうひとり、反町康治(59歳)も忘れることはできない。Jリーグでの指揮は2001年のアルビレックス新潟に始まり、湘南ベルマーレ、さらに松本山雅で、2019年までにJ1とJ2を合わせ639試合で采配を奮い、275勝を記録している。J2チームを率いた時期が長かったが、指揮した3クラブをすべてJ1に昇格させた手腕は並大抵のものではない。現在は日本サッカー協会の技術委員長の要職にある。

 ただ、この3人は現在はJリーグで指揮を執ってはいない。現在札幌を率いるミハイロ・ペトロヴィッチ(65歳)は、こうした「レジェンド監督」のなかで唯一の「現役」と言える。サンフレッチェ広島を皮切りに、浦和レッズ、そして札幌と、2006年から6年間ずつ監督を務めて今季で18シーズン目。J1での548試合で236勝は西野に次ぎ、J2の記録を合わせると590試合で267勝となる。(記録はいずれも2023年9月8日現在)

■スターではない名監督たち

 しかし今回取り上げるのは、こうした「スター監督」たちではない。活躍の舞台は主としてJ2。しかし指揮するどのクラブでもそれぞれの哲学に基づくしっかりとしたチームをつくり上げ、繰り返しJ1に昇格させ、20年間以上にわたってJリーグの舞台で戦い続けてきた監督たちがいる。

 もしかしたらことし天皇杯という「大魚」をつかみ取るかもしれない大木を別にすれば、ビッグタイトルなどひとつもない。しかし現在のJリーグが世界に例をみない競争の激しいリーグになった背景には、予算規模の小さなクラブでも選手たちの力を100%引き出し、それをチームとしてひとつの意思をもった生命体のレベルまでに引き上げてチャレンジを続けてきた監督たちの献身がある。

 その代表が、Jリーグで最多、769試合での指揮を数える石崎信弘(現在はJ3のヴァンラーレ八戸、65歳)であり、いまはJ2ギラヴァンツ北九州のスポーツダイレクターという職にあるものの、2021年までにJ1からJ3まで662試合で指揮を執った小林伸二(63歳)であり、そしていま熊本を率いて天皇杯で旋風を巻き起こしている大木なのである。

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