■「セルフケアの知識を学んで、自分で体を管理しないとダメ」
――では、国内の川崎フロンターレユースで育った三笘選手が、イギリスのプレミアリーグですぐに活躍できたのはすごい?
「そうですね。でも、彼は大学時代からボールコントロールが抜群でしたし、独特のリズムのドリブルがあったので、今の活躍はなんら不思議ではないですけどね」
――三笘選手のドリブルの特徴とは?
「ドリブルは、体の前にボールを置いて運ぶというのが基本とされています。でも、三笘選手は体を前にして、ボールを後ろに置いてドリブルをするんです。体を先行させながら、ボールを後ろで運ぶような、すごく独特なんですよね。そして、このドリブルの仕方って、フットサル選手がよくやるんですよ。
そして、ブラジル代表のネイマール選手も、実は、三笘選手と同じタイプのドリブルをするんです。彼は、小さい頃にフットサルをやっていたので、自然とそういった形になったんだと思います。先ほど述べたように、僕らのころは、体の中心、もしくは体の前にボールを置いて運びなさいというのが常識だったので、三笘選手とネイマール選手のドリブルは、新しいと思いました」
――『VISION』の中では、三笘選手流の食事術も載っています。先ほど、日本人選手の海外リーグ挑戦の難しさという部分で、体をいかに休められるかという点を挙げていましたが、城さんが現役時代に実践されたリカバリー術があれば、ぜひ教えてください。
「著書を読んでみて、僕らの時代とは大きく違うなと思いましたね。僕らの子どものころは情報やモノが、今ほど充実していなかったので、今の子たちの参考になる部分は少ないと思います。
でも、基本的な考え方として、試合が終わったあと、練習が終わったあとの30分から1時間以内に、しっかり栄養を補給すること。そうすると、回復能力が段違いなんです。特に、これから成長期で体を作る子どもたちは、しっかり補給してほしいですね。
トレーニングをすると、筋肉が壊れて、その壊れた筋肉が再生することで、より強い体になります。その過程で、栄養補給が必要不可欠。なにも食べないと筋肉の回復が遅れたり、回復が不十分になったりして、体に疲れやダメージが蓄積します」
――なにを食べるのがよいでしょう?
「定番のバナナでもいいですが、自分で調べて、自分に必要な栄養を補給するのが一番。プロのように、すべてチームが用意してくれる環境は稀ですから、セルフケアの知識を学んで、自分で体を管理しないとダメです。
僕も、ラリーガ時代は、チームの方針で、試合の3時間前に脂身の少ないステーキを食べさせられたし、だいぶ苦労しました。試合でエンジンがかかるなんて言って食べさせられましたが、消化が間に合わなくて、胃が重たいときもあったり(笑)。今では笑い話ですが、やっぱり正しい食事をしなくちゃダメですね」
城彰二(じょう・しょうじ)
1975年6月17日北海道生まれ。鹿児島実業高等学校3年時の高校サッカー選手権大会でベスト4に入るなど、プロ入り前から活躍し、高校卒業後にジェフユナイテッド市原に加入。デビュー戦を含め4試合連続でゴールを決めるなど、若くして注目の選手となる。その後、横浜マリノスへの移籍などステップアップを続け、A代表として1997年、フランスW杯アジア最終予選に参加。悲願の本選初出場を決めたチームにおいて、エースストライカーとして活躍する。現役引退後は、解説者として活躍。現在はユーチューブチャンネル『JOチャンネル』での動画配信など、サッカーの魅力を発信し続けている。