それに対し、イングランドやスペインでは、2010年代に至るまで、一部のクラブを除いて女子サッカーはほとんど興味をもたれていなかった。だが2010年代になるとビッグクラブが次々と女子チームへの投資を始める。しっかりとした待遇で選手とプロ契約を締結し、練習環境を整え、一流の指導者が男子のトップチームと同じサッカーを指導するようになったのだ。この決勝戦のピッチに立った選手の大半が、上記のように年間1000億円規模の収益を誇る「ビッグクラブ」の所属なのは偶然ではない。
■市場開拓の有効手段
こうしたビッグクラブの女子サッカーに対する投資の狙いが、男子トップチームと並ぶ「稼ぎ頭」にすることにあるわけではない。スペインやイングランドでも、現在も、女子の国内リーグのクラブ入場者数は通常数千人にすぎない。女子チームに投資するのは、これまではサッカー場などには行きたくないと思ってきた人びとを引きつけ、ファン層を広げ、何よりもクラブのイメージアップを図るため。すなわち「マーケティング(市場開拓)」の有効な手段ととらえられているためだ。それが競争になり、思いがけなく女子サッカーのレベルを急上昇させたのだ。
すなわち、現在の世界の女子サッカーのトレンドは、明らかに欧州のクラブサッカー、なかでもイングランドとスペインのプロ女子リーグのなかにある。そしてそのトレンドとは、ひと言で言えば「インテンシティ(強度)」ということになる。