■「タイトルにどん欲に」
それから5か月半が経過した8月30日のデンカビッグスワンスタジアム。試合後にあふれたのは、笑顔とガッツポーズとバラバラだった。先制されながら、延長後半での逆転。そして、最悪の同点弾を浴びながらのPK戦での勝利――。
何もかもが異なっていた。当時、新潟駅へと走る上越新幹線からは雪が覆う越後平野が印象的だった。一方で8月30日の新潟は、北国の印象とはほど遠い蒸し暑さ。120分間ピッチの横にいたので、少し歩けば汗が流れる感覚に閉口した。
延長後半に一次逆転となるゴールを決めたFW山田新は、「途中からでも相当きつかったんで、120分やっている人は……」と振り返り、いつものように前線から追う守備をあまり見せなかったことを、「この暑さの中でなかなか後ろ、全体がついてこれないので、行きすぎても、行けなさそうな感じがあった。そこはコントロールしながらやっていた」と戦い方に影響が出たことを説明した。
この試合を前に鬼木達監督が選手に伝えた言葉は、「タイトルにどん欲になること」。
「タイトルに対する執念とか執着心とか、そういうものを見せようという話をしました。たまたま取るのではなくて、意識をして、しっかりとどん欲に取りに行くっていう姿勢を見せよう」(鬼木監督)
この言葉が、選手の胸に刺さった。小林悠は、この言葉を口にした上で、「今日は本当に一体感がすごいあった」と、チームの雰囲気を説明した――。
(取材・文/中地拓也)
(後半へ続く)