【川崎、新潟戦勝利の裏側(1)】3月11日に自信を喪失した新潟の地で得たチームの一体感。「29秒の沈黙」から、「今日は本当に一体感がすごいあった」への変化の画像
アルビレックス新潟戦に勝利して喜ぶ川崎フロンターレの選手 撮影:中地拓也

 蒸し暑さの中で頭をよぎったのは、半年も経たない前の同じスタジアムでの光景だった。2023年3月11日のデンカビッグスワンスタジアム。この時、川崎フロンターレアルビレックス新潟と対戦して、敗れていた。

 その試合後、選手に何を聞くべきか逡巡した。完封負けという結果だけでなく、内容も背景も苦しいものだったからだ。今季の川崎は開幕戦で前年度優勝チームを相手に黒星スタートとしていたものの、その後の2戦は1勝1分。ここからという第4戦目で昇格組と区分けされるチーム相手に突きつけられた90分間は、あまりにも鋭利だった。

 それは選手も同じだった。試合後、バスに乗る前のある主力選手に、「何が一番難しかったか」を聞いた。最初の質問だけに総括的な部分もあって、答えがすぐに返ってくると思った。が、言葉が出てくる前に29秒の間があった。その沈黙から、チームとして負ったダメージの大きさを感じずにはいられなかった。

 当時、あるチーム関係者はロッカールームで動けなかった選手がいて、言葉を掛けながらなんとか帰路を促したことを教えてくれていた。3月11日、川崎は新潟で苦渋を舐めながらリスタートを切った。

  1. 1
  2. 2