決して偶然ではないVARの末のPK戦「歴史的敗退」【女子サッカー「絶対女王」アメリカの時代は終わったのか】(1)の画像
日本代表だけではなく、強国の見逃せない敗退があった(写真はイメージです) 撮影:中地拓也

 女子ワールドカップではベスト8で敗れたものの日本代表の快進撃が話題となる一方、見逃せない大きなトピックがあった。これまでの「絶対女王」アメリカ代表がラウンド16で敗れたのだ。女子サッカーをけん引してきた強国の早期敗退は何を意味するのか。サッカージャーナリスト・大住良之が世界の潮流を探る。

■これまでにない早期敗退

 オーストラリアとニュージーランドの共同開催で行われているFIFA女子ワールドカップ。日本ではなでしこジャパンの快進撃だけに大きな注目が集まっているが、世界では2020東京オリンピック(2021年に開催)金メダルのカナダ、そしてブラジル、ドイツといった強豪チームのグループステージ敗退のニュースが話題になっている。そして何よりも大きな衝撃は、3連覇を目指すアメリカのラウンド16という早い段階での敗退だった。

 8月6日、アメリカはオーストラリアのメルボルンでスウェーデンと対戦。圧倒的な攻勢をとったもののスウェーデンGKゼシラ・ムゾビッチの再三の好守に妨げられて120分間を戦って無得点。0-0のままPK戦決着となった。

 PK戦は7人目までけるという接戦になったものの、先攻アメリカの7番手DFケリー・オハラが上に外して失敗。アメリカは絶体絶命のピンチとなった。しかしスウェーデンの7番手FWリナ・フルティグのキックはアメリカGKアリサ・ネアが左に跳んで止め、はじいたボールは真上に低く上がった。それを倒れたままのネアが体を回転して右手でかき出した。

 ボールがゴールラインを割っていたかどうか、非常にきわどいところだった。しかし現在女子で世界最高のレフェリーと言われるステファニー・フラパール主審(フランス)は、さすがに冷静だった。30秒ほどのVARとの交信の後、ゴール、すなわち試合終了を宣言したのである。その後に出された映像では、ボールはほんのわずかゴールラインから離れていた。日本のファンにとっては、昨年の男子ワールドカップの「三笘の1ミリ」を思い起こさせるシーンだった。

 ともかく、PK戦を5-4で制したスウェーデンが勝ち上がって準々決勝でなでしこジャパンと当たることになり、アメリカはラウンド16というこれまでにない早い段階での敗退となったのである。

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